YAMADARIUM

本棚「立ち止まる」の棚

立ち止まる

未送信の引力

秋野唄(AKINO Uta)

送らなかった言葉は、どこへ行くのでしょう。

一

この本について

深夜二時半、眠っているきみに送ろうとした言葉を、そっと手の中に残す歌です。

ためらう指が紡いだ文字は、誰の目にも触れないまま。本当はただ声が聞きたい。でも、朝が早いと言っていた。着信の音で起こしたくない。先回りして優しいふりをしたのは、臆病かぜだったと打ち明けるように、指が止まります。

届かないままくすぶる言葉は、きみを強く想う引力。送信ボタンを押せなかった手には、馬鹿みたいな優しさが詰まっている。すぐ隣にいるような距離で、何光年も離れているみたいな夜に、減っていく電池と白黒のアイコンを見つめています。

電源を切り、電波の代わりに願いを放つ。目覚める世界が晴れますようにと祈りながら、未送信のまま眠りにつく一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

38 行

ためらう指が紡つむいだ文字は誰の目にも触れないままで本当はただ声が聞きたい

時計の針は深手のひらの中で眠るきみを想像したら指が止まる

朝が早いと言っていたね着信の音で起こしたくない迷惑かな・・・って先回りして優しいふりした臆病おくびょうかぜだ

届かないままの くすぶるはきみを強く想うなんだよ送信ボタンを押せなかった手に馬鹿みたいな優しさが詰まってるこのままでも悪くない夜だ

暗い部屋の中 減っていく白黒のアイコン見つめたまま繋がらなくても確かにそこにあるんだ

すぐ隣にいるような距離で何も離れてるみたいだでもこの重力は ぼくだけの秘密

届かないままの くすぶる言葉はきみを強く想う引力なんだよ送信ボタンを押せなかった手に馬鹿みたいな優しさが詰まってるこのままでも悪くない夜だ

届かないままの くすぶる言葉はきみを強く想う引力なんだよ送信ボタンを押せなかった手に馬鹿みたいな優しさが詰まってるこのままでも悪くない夜だ

電源を切ってまぶたを閉じる電波の代わりに願いを放つよ目覚める世界が晴れますようにと夜の底からそっと祈ってる

未送信のままぼくらは眠る

目録カード

「光」が出てくる、ほかの本 15 冊

目録カード

「夜」が出てくる、ほかの本 16 冊

目録カード

「空」が出てくる、ほかの本 20 冊

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

引力

「引力」という言葉は、江戸時代の蘭学者・志筑忠雄の訳書の中で造られたとされる

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 言い回し

丑三つ時

「丑三つ時」は、今の午前2時から2時半ごろのこと

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

光年

「光年」は時間の単位ではなく距離の単位で、1光年は約9兆4600億キロメートル

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

電池

1800年、ボルタは亜鉛と銅の円板を重ねて、最初の電池を作った

寄り道する

四

あとがき

「引力」という言葉は、江戸時代の蘭学者、志筑忠雄が西洋の天文学の本を訳した『暦象新書』の中で造られたものとされています。目に見えないのに確かに働く力に、日本語の名前がついたのは、そのときでした。一光年は約九兆四千六百億キロメートル。二時半は、昔の言い方なら丑三つ時のあたりです。眠っている人を起こさないように、言葉は手の中にとどまっています。届かなかった言葉は、何の力も持たないと思われがちです。けれど、引力は、離れていても、触れていなくても働きます。送らなかった夜の指の重さも、誰かを思っていた力のひとつだと考える見方が、あってもいいのではないでしょうか。

五

この本の歌を聴く

近日公開予定です。

六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

隣の席の質量分け合う読了何も言えないとき、隣にいることはできますか。

「立ち止まる」の棚の向かいには、「分け合う」の棚があります。

七

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。