YAMADARIUM

本棚「比べない」の棚

比べない

自転遅れの朝

秋野唄(AKINO Uta)

置いていかれた場所からは、何が見えますか。

一

この本について

誰の機嫌も損ねない言葉を探して、今日もすり減っていく朝の歌です。

文字を打っては消し、画面の点滅を見つめる。みんなが当たり前の顔で次のホームへ急ぐなかで、靴紐を結び直すふりをして、俯いたままやり過ごす。迷いなく夢を語る背中に上手な相槌を打ち、夕暮れのアスファルトに、自分の影が長く伸びていく。

正しいルートなどどこにも用意されていないのに、見えない線を必死になぞってきました。愛想笑いをやめたら、向かい風は少し冷たかった。それでも、自分の足で立っている実感だけは残ります。

置いていかれたって、いいじゃないか。急行より、窓の景色が見える各駅停車へ。不器用な歩幅を誰よりも誇りに思い、「ちゃんと正解だよ」と声をかける一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

39 行

文字を打っては消してを繰り返す画面の点滅をただ見つめてる誰の機嫌も損ねないを探して今日もぼくだけが すり減っていく

みんなは当たり前みたいな顔で次のへ急いでいくのにぼくはを結び直すふりで俯うつむいたまま やり過ごした

置いていかれたって、いいじゃないか息を切らして飛び乗る急行列車より窓の景色が見える各駅停車がいい真面目すぎるきみの不器用な歩幅をぼくは誰よりも誇りに思うよ

迷いのないを語る背中にすごいねって上手なを打つ何者にもなれそうにない自分の影が夕暮れのアスファルトに長く伸びた

正しいルートや正解なんてどこにも用意されていないのにみんなと同じになれないことが怖くて見えない線を必死になぞっていたんだ

置いていかれたって、いいじゃないか息を切らして飛び乗る急行列車より窓の景色が見える各駅停車がいい真面目すぎるきみの不器用な歩幅をぼくは誰よりも誇りに思うよ

傷つかないための愛想笑いをやめたら少しだけ向かい風が冷たく感じたよでもこの足でしっかり立っている実感だけは確かにぼくらの中に残ったんだ

置いていかれたって、いいじゃないか息を切らして飛び乗る急行列車より窓の景色が見える各駅停車がいい真面目すぎるきみの不器用な歩幅をぼくは誰よりも誇りに思うよ

焦る背中たちを静かに見送ってぼくらはぼくらの今日を確かめよう遠回りしたからこそ出会える明日があるきみのその歩き方で、ちゃんと正解だよ

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

相槌

「相槌」は、もとは鍛冶で二人の職人が交互に槌を打ち合わせること

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

靴紐

靴紐がほどけるのは、足が地面を打つ衝撃と、紐の端が振られる動きが重なるから

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

ホーム

駅の「ホーム」は「プラットホーム」のことで、もとの意味は「平らな形」

寄り道する

四

あとがき

「相槌」は、もとは鍛冶の言葉です。二人の職人が向かい合い、交互に槌を打ち合わせること。話に合わせてうなずくのは、相手の鉄を一緒に打つことだったとも言えます。上手に打ち続けて、自分の手だけが疲れていく日があるのは、そのせいかもしれません。靴紐は、足が地面を打つたびに結び目がゆるむと、研究で確かめられています。ほどけるのは、結び方が悪いからだけではなく、ちゃんと歩いてきたからなのでしょう。速い列車に乗れなかった日は、負けた日だと思われがちです。窓の外をゆっくり見ていた時間も、その人の歩幅の一部だという考え方があってもいいのではないでしょうか。

五

この本の歌を聴く

近日公開予定です。

六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

はみ出したチョークの軌道踏み出す読了線からはみ出した足あとは、失敗ですか。

「比べない」の棚の向かいには、「踏み出す」の棚があります。

七

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。