YAMADARIUM

本棚「比べない」の棚

比べない

Crickets on the Night Shift

Yamadarium

静かな夜は、本当に空っぽですか。

一

この本について

テレビを消した夜の部屋で、生け垣の下から聞こえてくる虫の声に気づく。そんな歌です。

スポットライトも、ギャラも、観る人もいない。それでも虫たちは、理由も観客もいらないまま、静けさのふちで時を刻みつづけている。生け垣の下から、コロコロ、コロコロと。

どこかでは、10分休憩の看護師がコーヒーを握りしめている。パン職人も、タクシー運転手も、まだ起きているみんなも。疲れ方も働く時間も違うけれど、足もとで響く歌は同じ。互いの名前は、知らないまま。

持ち帰ったざわめきを、少しずつ小さくしていくと、聞こえてくるものがある。どの生け垣にも、どの庭にも、小さく歌って、せっせと働く仲間がいる。暗闇は、空っぽなんかじゃなかった。眠れない夜に、そっと開いてほしい一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

38 行

I hit the remote and the room goes still,(リモコンを押すと 部屋がしんとする)the laugh track sinks back into the wall,(作りものの笑い声が 壁に沈んでいく)then past the screen door, down along the porch,(すると網戸の向こう 縁側の先で)somebody's been working through it all(そのあいだも ずっと誰かが働いてた)

No spotlight, no paycheck, no one in the seats,(スポットライトも ギャラも 観る人もいない)just a chirr and a chirr from under the hedge,(生け垣の下から コロコロ コロコロ)they don't need a reason, they don't need a crowd,(理由もいらない 観客もいらない)they just keep the hours on the quiet edge(静けさのふちで ただ時を刻む)

Who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)clocked in, clocked in, singing low,(仕事中 仕事中 小声で歌う)who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)little , take it slow,(ちいさなコオロギ ゆっくりでいい)I hear you now, I hear you now,(聞こえるよ 聞こえるよ)turns out the dark was never empty(暗闇は っぽなんかじゃなかった)

Somewhere a nurse on her ten-minute break(どこかで 10分休憩中の看護師が)holds her coffee like it's holding her,(コーヒーを握りしめる 支えてもらうみたいに)and under the stairs, the same little crew(階段の下では 同じ小さな仲間たちが)keeps her company, steady as a (猫が喉を鳴らすように 絶えずそばにいる)

Different kind of tired, different kind of shift,(疲れ方も違う 働く時間も違う)but the chorus underneath is the same,(でも足もとで響く歌は同じ)she'll never know I'm listening too,(私も聴いてるなんて あの人は知らないまま)and they'll never know our names(虫たちは 私たちの名前も知らない)

Who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)the bakers and the too,(パン職人も タクシー運転手も)who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)the ones still up, the same as you,(まだ起きてるみんな きみと同じ)I hear you now, I hear you now,(聞こえるよ 聞こえるよ)we're keeping time together(一緒に 時を刻んでる)

Turn it down, all the noise you carried home,(小さくして 持ち帰ったざわめきを)turn it down, down, down,(小さく 小さく もっと小さく)the quiet isn't empty, it's been humming(静けさは空っぽじゃない ずっと鳴ってた)under every town(どの街の足もとでも)

Who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)every hedge and every yard,(どの生け垣にも どの庭にも)who's still out there? We are, we are,(まだ誰かいる? いるよ いるよ)singing small and working hard,(小さく歌って せっせと働いて)I hear you now, I hear you now,(聞こえるよ 聞こえるよ)crickets on the night shift, keep it going(勤のコオロギたち その調子でね)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

コオロギ

コオロギの鳴く速さは気温で決まる、と19世紀の科学誌に報告されている

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

タクシー

英語の cab(タクシー)は、ヤギのように「跳ねる」馬車の名前から来ている

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

喉を鳴らす

猫が喉を鳴らす低い音は、脳からの合図がなくても喉だけで出せることが実験で示された

寄り道する

四

あとがき

誰にも見られていない時間は、なかったことになる。そう思うと、夜中の仕事や眠れない時間が、ただの空白に見えてきます。でも、コオロギが鳴く速さは気温で決まる、という短い報告が19世紀の終わりの科学誌に載りました。誰に聞かせるためでもない声が、夜の温度まで刻んでいたのです。見られていない時間にも、ちゃんと中身がある。そう考えてみてもいいのではないでしょうか。拍手のない夜を過ごしている人は、きっとあなたのほかにもいます。今夜、テレビを消したら、少しだけ耳を澄ませてみてください。あなたの時間を、誰かが一緒に刻んでいます。

五

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六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

Fly Beyond踏み出す読了燃え尽きることは、負けですか。

「比べない」の棚の向かいには、「踏み出す」の棚があります。

七

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