YAMADARIUM

本棚「立ち止まる」の棚

立ち止まる

Dew on Everything

Yamadarium

何もできなかった夜は、本当に無駄でしたか。

一

この本について

眠れない午前3時、外に出ると、庭じゅうに露が降りていた。そんな歌です。

やることリストを何度もなぞって、取りこぼしたことばかり数えてしまう夜。古いコートを羽織って外に出ると、芝の葉先にも、庭の椅子にも、手すりにも、ブランコにも、露がかかっている。誰も働いていない。誰も頑張っていない。それでも、時が流れるうちに結んでいた。

いま地球の反対側では、誰かがひとりベンチでお昼を食べて、なんとか一日をこなしている。12時間後、灯りを落とすころ、あの人の庭にも同じ銀色が降りる。

頑張ってもいない、誇ってもいない。じっとしていたのも、無駄じゃなかったのかもしれない。結ぶままに、ゆっくりと。足首をしっとり濡らして、そっとベッドへ戻る一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

47 行

, and I still can't sleep,(午前3時 まだ眠れない)going over lists I've got to keep,(やることリストを 何度もなぞる)all the things I dropped, for heaven's sake,(取りこぼしたことばかり まったくもう)

so I step outside in my old coat,(古いコートを羽織って 外に出る)cold air sitting gently on my throat,(冷たい気が そっと喉に触れる)and the yard is quiet, wide awake(庭は静かで 目を覚ましてる)

Then I notice something at my feet,(そのとき 足もとの何かに気づく)on the blades of grass, the garden seat,(芝の葉先に 庭の椅子に)nobody was working, no one tried,(誰も働いてない 誰も頑張ってない)still it gathered while the hours slide(それでも 時が流れるうちに 結んでいた)

on everything,(どこもかしこも 露がかかって)on the railing and the swing,(手すりにも ブランコにも)nobody had to push or try,(誰も押さなくても 頑張らなくても)it just happened while the hours went by,(時が過ぎるあいだに ただ降りていた)dew on everything,(どこもかしこも 露がかかって)dew on everything(どこもかしこも 露がかかって)

On the far side of the world right now,(いま 地球の反対側で)someone's getting through her day somehow,(誰かが なんとか一日をこなしてる)eating lunch out on a bench, alone,(ひとりベンチで お昼を食べて)

twelve hours on, when her lights are low,(12時間後 灯りを落とすころ)she'll find the same thing that I know,(私と同じものを 見つけるはず)silver settling on her own(あの人の庭にも 銀色が降りる)

It isn't trying, and it isn't proud,(頑張ってもいない 誇ってもいない)it doesn't need to say a thing out loud,(声に出して 何か言うこともない)it just settles where the coolness goes,(ただ ひんやりしたほうへ そっと降りて)and by morning, everybody knows(朝になれば みんなが気づく)

Dew on everything,(どこもかしこも 露がかかって)on a spider's ,(クモの 銀の糸にも)on the car I haven't washed in weeks,(何週間も洗ってない 車にも)on the gate that always creaks,(いつもきしむ 門にも)dew on everything,(どこもかしこも 露がかかって)dew on everything(どこもかしこも 露がかかって)

Maybe lying still was not a waste,(じっとしてたのも 無駄じゃなかったのかも)maybe something's forming in the space,(空白の中で 何かが形になってたのかも)listen close, it makes no sound, not one,(耳を澄ましても 音ひとつしない)

not a whisper, not a single word,(ささやきも ひとつもない)just the softest nothing I have heard,(聞いたことのない やわらかな静けさ)and still, by morning, it is done(それでも朝には ちゃんとできあがってる)

Dew on everything,(どこもかしこも 露がかかって)on my sleeve and on my ring,(袖にも 指輪にも)all the hours I called a waste,(無駄だと思ってた 時間のあいだに)something gathered, without haste,(何かが 急がずに 結んでいた)dew on everything,(どこもかしこも 露がかかって)dew on everything(どこもかしこも 露がかかって)

Three a.m., I tiptoe back to bed,(午前3時 そっとベッドへ戻る)ankles damp, a quiet in my head,(足首はしっとり 頭の中は静か)let it gather, let it take its time(結ぶままに ゆっくりと)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

クモの糸

濡れたクモの糸には小さな結び目ができ、まわりの水滴をそこへ集める

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

午前3時

昔のヨーロッパでは、夜中に一度起きて過ごす「ふたつの眠り」がふつうだった、という説がある

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

露

露は空から降る雨とは違い、夜に冷えた草や物の表面に、空気の中の水分が結んだもの

寄り道する

四

あとがき

何もできなかった夜は、無駄にした時間。そう思うと、眠れない夜はますます長くなります。でも、露は空から降ってくる雨とは違います。1814年、ロンドンの医師ウィリアム・チャールズ・ウェルズは、晴れた静かな夜に、草や物が熱を空へ逃がして冷え、その表面に空気の中の水分が結んだものが露だと、何年もの観察から確かめました。誰も何もしていない、いちばん静かな時間に、露はできあがっています。じっとしていることも、何かを育てている時間なのかもしれません。眠れない夜は、無理に何かをしなくていい。朝、芝の先が光っていたら、それはあなたの夜の続きです。

五

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

Rain Plays the Whole Street選び直す読了ずぶ濡れの帰り道は、ただの災難ですか。

「立ち止まる」の棚の向かいには、「選び直す」の棚があります。

六

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。