YAMADARIUM

本棚「信じ直す」の棚

信じ直す

Still Red Underneath

Yamadarium

燃え尽きたと思った夜、灰の下には何が残っていると思いますか。

一

この本について

パーティーが終わった夜、ひとり残って、消えかけたファイヤーピットの前に座る人の歌です。

最後のひとりも寝に行き、紙皿は重ねられ、ろうそくは消えた。いつも最後に拭いて、片付けて、どの蓋がどこにあるかを知っているのは私。そんな私を、誰も気にかけない。

灰と燃えかすだけになったピットを、枝でひとつつき。すると灰色の下に、赤い筋がひとつ。顔を寄せて、糸のように長く息を吹きかけると、熾火が目を覚まして広がっていく。薪も、マッチも、ゼロからのやり直しもいらなかった。

煙は塀を越えて、知らない誰かの眠りの中へ。上は灰色でも、内に熱を抱えたまま、やさしい風のひと吹きを待っている。炎じゃなくていい、温かいだけで十分。消えかけた火のそばで、自分の中に残っていた赤さに気づいていく一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

47 行

And then the last of them goes in to bed,(最後のひとりも 家に入って寝に行く)the paper plates are stacked, the candles out,(重ねた紙皿 消えたろうそく)and I'm the one who stayed.(残ったのは 私)

I always am, the last to wipe, to sort,(いつもそう 最後に拭いて 片付けて)the one who knows where every lid is kept,(どの蓋がどこにあるか 知ってるのは私)nobody checks on that.(そんな私を 誰も気にかけない)

The pit's gone gray, a bowl of ash and grit.(ファイヤーピットは灰色 灰と燃えかすの器)I pull the cooler close and sit on it,(クーラーボックスを引き寄せて 腰かける)a stick, a poke, and wait.(枝を一本 ひとつつき 待つ)

And there, beneath the gray, a seam of red.(ほら 灰色の下に 赤い筋がひとつ)I lean in close and blow, a long soft thread,(顔を寄せて 吹きかける 糸みたいに 長く やわらかく)the coals wake up, and spread.(熾火が目を覚まし 広がっていく)

It only took , that's it,(ほんの少し 気を送っただけ それだけ)no log, no match, no starting from the start,(薪も マッチも ゼロからのやり直しもいらない)just air, and what was left.(空気と 残ってたものだけで)

Still red, still red, I thought that I was spent,(まだ赤い まだ赤い 燃え尽きたと思ってたのに)but under all this gray it never quit,(灰色の下で 一度も消えてなかった)and underneath, still red.(その下は まだ赤い)I don't need flames, I don't need to be bright,(炎はいらない 明るくなくていい)just warm, and that's a lot.(ただ温かい それだけで たいしたもの)

The smoke goes slipping sideways through the yard,(煙が庭を 横へすべるように流れていく)across the fence, across the next one, out,(塀を越え 隣の塀も越えて 外へ)inside a stranger's quilt.(知らない誰かの 掛け布団の中へ)

And someone half asleep will (うとうとした誰かが その匂いに気づいて)and think of one old fire, and someone's hand,(いつかの焚き火と 誰かの手を思い出す)from one small coal I fed.(私が息を吹いた 小さな熾火ひとつから)

So maybe all of us are like that,(もしかしたら みんな あんなふうに埋み火なのかも)gone gray on top, and holding heat inside,(上は灰色でも 内に熱を抱えて)waiting for one kind draft.(やさしい風の ひと吹きを待ってる)

I didn't know how much was left to light.(燃やせるものが まだこんなに残ってたなんて)I've been the ash, the dishes, and the dread,(ずっと私は 灰で 洗い物で 憂うつそのもの)but here, it's turning red.(でもほら 赤くなっていく)

Still red, still red, it waited, never said(まだ赤い まだ赤い ずっと待ってた)a single word about how long it's held,(どれだけ持ちこたえてきたか ひと言も言わずに)underneath it's still red.(その下は まだ赤い)No song, no cake, no candles, just the heat(歌も ケーキも ろうそくもない ただ熱だけ)and one cheek getting hot.(片方の頬が ほてっていく)

Still red, still red, if you've gone gray tonight,(まだ赤い まだ赤い 今のあなたが 灰色でも)if all you feel is ash, and nothing's left,(灰しか感じなくて 何も残ってないと思っても)and I bet you're still red.(きっと あなたもまだ赤い)You don't need fire, just someone who will wait,(火はいらない 待ってくれる誰かがいればいい)and blow, and not forget.(息を吹きかけて 忘れずにいてくれる誰かが)

Still red, still red, I'll bank the coals and stand,(まだ赤い まだ赤い 熾火に灰をかぶせて 立ち上がる)and smell like smoke tomorrow, and be glad,(明日は煙の匂いがして それがうれしい)still red, still red, still red.(まだ赤い まだ赤い まだ赤い)

The house is dark, my sister's light is out.(家は暗い 姉の部屋の明かりも消えた)Go on, girl. Go to bed.(さあ あんたも もう寝なさい)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

埋み火

火を絶やさないように、炉や火鉢の灰にうずめておく炭火を「埋み火」と呼ぶ。冬の季語

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

匂いの記憶

匂いで思い出す記憶は、言葉で思い出す記憶より、子どものころ(6〜10歳ごろ)のものが多いという研究がある

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

火の三角形

ものが燃えるには「燃えるもの」「酸素」「熱」の三つがそろう必要がある。これを「火の三角形」と呼ぶ

寄り道する

四

あとがき

燃え尽きたら、もう一度大きな火を起こすしかない。そう思われがちです。でも、ものが燃えるには、燃えるもの・酸素・熱の三つがそろえばいい。灰をかぶった炭に熱が残っていれば、足りないのは、ほんの少しの空気だけなのかもしれません。昔の人は、火を絶やさないように炭火を灰に埋めて夜を越し、それを「埋み火」と呼びました。灰色に見えるのは、消えたからではなく、守っていたからとも言えます。明るく燃えなくてもいい。ただ温かいだけで、たいしたもの。そばで待って、息を吹きかけてくれる誰かがいれば、もう一度温まれる夜もあるはずです。

五

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

Ear to the Ice忘れない読了黙っているあいだ、胸の中では何が鳴っていますか。

「信じ直す」の棚の向かいには、「忘れない」の棚があります。

六

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