YAMADARIUM

本棚「選び直す」の棚

選び直す

Fifteen Degrees Up

Yamadarium

最後に空を見上げたのは、いつですか。

一

この本について

スマホの光ばかり見ていた帰り道に、顎をほんの15度上げる。それだけの歌です。

一日じゅう背中を丸めて、道のひびを数えて歩く。少し先で街灯がチカッと灯ったとき、スマホをポケットにすべりこませて、ゆっくり顎を上げる。そこには桃色が藍に溶けていく空があって、それはずっと、そこにあった。

時差をいくつも越えた街で、会うこともない誰かが、オレンジの袋をさげたまま、同じように空を見上げている。言葉ひとつ交わさなくても、同じほうへ傾いている。

いつから見上げなくなったんだろう。請求書か、締め切りか、ニュースか。誰かに止められたわけじゃない。選べることを忘れていただけ。空は何ひとつ求めず、みんなの席をあけて待っている。横断歩道で、道すがら。今日からでも間に合う、小さな角度の一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

45 行

Phone light on my face again,(またスマホのが 顔を照らす)eyes on the pavement since who knows when,(いつからだろう 足元ばかり見てる)bent like a question mark all day,(一日じゅう 分からないことに背を丸めて)counting the cracks along the way(道のひびを数えてる)

The streetlamp up ahead blinks on,(少し先で 街灯がチカッと灯る)a small cough in the hush,(静けさに 小さな咳ばらい)I slip my phone into my pocket(スマホをポケットにすべりこませて)and lift my chin, no rush(顎を上げる ゆっくりと)

up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)the sky's been saving my seat,(はずっと 席をあけて待ってた)Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)it's so much wider than the street,(道よりも ずっと広い)peach melting into ,(桃色が藍に溶けていく)it's been there the whole time, you know(ずっとそこにあったんだね)

Somebody I will never meet(会うこともない誰かが)stops halfway down her own street,(いつもの道の途中で 足を止める)a bag of oranges in one hand,(片手にオレンジの袋さげて)she tips her head and understands(空を見上げて ふと気づく)

Her streetlamp clears its throat like mine,(あの人の街灯も ここと同じ咳ばらい)a few away,(時差をいくつも越えた街で)we'll never trade a single word,(ひとつ交わすことはないけど)but we're leaning the same way(同じほうへ 傾いてる)

Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)it's the same one over her,(あの人の上にも 同じ空)Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)the colors slowly start to blur,(色がゆっくり 滲みだす)nobody asked it to be there,(誰に頼まれたわけでもないのに)it just keeps showing up, like it cares(気にかけるみたいに いつもそこにいる)

When did I stop doing this?(いつから やめてたんだろう)Was it the bills? The deadlines? The news?(請求書? 締め切り? ニュース?)Did somebody tell me not to?(誰かに止められた?)No. I just forgot I could choose.(ううん 選べることを忘れてただけ)

Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)I'm gonna do it every day,(これから毎日 そうしよう)Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)at the crossing, on the way,(横断歩道で 道すがら)it never asks me for a thing,(空は何ひとつ 求めたりしない)just a little lift of the chin(ほんの少し 顎を上げるだけ)

Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)wherever you're walking from,(どこから歩いてきたとしても)Fifteen degrees up, fifteen degrees up,(15度だけ上へ 15度だけ上へ)the sky's saved a seat for everyone,(空はみんなの席を あけている)peach melting into indigo,(桃色が藍にとけていく)it's been there the whole time, you know,(ずっとそこにあったんだね)fifteen degrees up(15度だけ 上へ)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

時差

世界の時差のもとになる経度0度の線は、1884年の国際会議でグリニッジに決まった

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

藍あい

虹を七色に分けたのはニュートン。藍(インディゴ)もそのひとつに数えられた

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

15度

頭を15度うつむけると、首にかかる重さは約12kgになるという試算がある

寄り道する

四

あとがき

前を向こう、とよく言われます。でも、疲れているときに前を向くのは、案外むずかしい。それなら、前ではなく、少しだけ上でもいいのではないでしょうか。頭を15度うつむけるだけで、首には10kgを超える重さがかかるという試算があります。顎を少し上げることは、その重さをほんの少し下ろすことでもあります。見上げた空の「藍」という色さえ、ニュートンが虹を七つの色に分けたときに名前を与えたものだと言われます。空の色も、見上げない理由も、案外あとから決まったもの。選び直すのは、横断歩道の信号待ちからでいい。

五

この本の歌を聴く

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六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

Waving at the Space Station分け合う読了その悩み、宇宙からも見えますか。

「選び直す」の棚の向かいには、「分け合う」の棚があります。

七

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