YAMADARIUM

本棚「逃げていい」の棚

逃げていい

六畳半の宇宙論

秋野唄(AKINO Uta)

部屋から出ない夜に、宇宙はありますか。

一

この本について

薄暗い部屋の真ん中で、天井のシミを数えながら、明日のことに怯える夜の歌です。

ドアの向こうの足音が、やけに恐ろしい。明日になればまたあそこへ行かなきゃいけないのかな。立派な大人にならなきゃ、という見えない重圧が首を絞める。イヤホンを深く押し込んで、外のノイズを遮断するだけで、精一杯の毎日です。

逃げていると指を差されても、戦うための武器なんてない。無理にドアを開けなくていい。この六畳半がぼくらの宇宙だ。分厚い毛布にくるまり、好きなバンドの曲を流し、安いギターを掻き鳴らして、きみのつまらない冗談で笑う。ここにいるだけで、ちゃんと生きている。

広い海で溺れるくらいなら、小さな箱舟で息を潜めて、ぼくらだけの灯りをともす。明日のことは、明日考えればいいさと夜を守り抜く一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

47 行

薄暗い部屋の真ん中天井のシミを数えてるドアの向こうの足音がやけに恐ろしく感じる明日になればまたあそこへ行かなきゃいけないのかな

立派な大人にならなきゃって見えない重圧が首を絞めるそんなに広い場所に出なくたってぼくらはちゃんと息ができるのに

無理にドアを開けなくていいこのがぼくらのだ分厚い毛布に くるまりながら好きなバンドの曲を流そう誰の目も届かないこの場所でぼくらだけの夜を守り抜くんだ

画面越しのニュースキャスターが誰かの失敗を笑っているイヤホンを深く押し込んで外のノイズをすべて遮断しゃだんした自分のを守るだけで精一杯の毎日だ

逃げているって指を差されても戦うための武器なんてないこの狭いベッドの上だって確かな体温があるだろ

無理にドアを開けなくていいこの六畳半がぼくらの宇宙だ安いギターを 掻かき鳴らしてきみのつまらない冗談で笑う社会の広さに 怯おびえなくていいここにいるだけで ちゃんと生きてる

何者かになれと急かす朝焼けも分厚いカーテンで弾はじき返してやる外の世界の正しいルールより隣のきみの寝息のほうが、よっぽど大事だ

無理にドアを開けなくていいこの六畳半がぼくらの宇宙だ分厚い毛布に くるまりながら好きなバンドの曲を流そう誰の目も届かないこの場所でぼくらだけの夜を守り抜くんだ

広い海で溺れてしまうくらいならこの小さなで息を潜めよう何もない部屋の片隅でぼくらだけの灯りをともして

明日のことは、明日考えればいいさ

目録カード

「夜」が出てくる、ほかの本 16 冊

言葉の寄り道 ・ 漢字の成り立ち

宇宙

「宇」は空間の広がり、「宙」は時間の広がりを表す字

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

箱舟

ノアの箱舟の ark は、ラテン語の「箱」から

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

六畳半

畳の大きさは地域で違い、京間と江戸間では長い辺が約15センチ違う

寄り道する

四

あとがき

「宇宙」の「宇」は天地四方の広がりを、「宙」は過去から未来への時間の流れを表すと、古い中国の書物『淮南子』は伝えています。宇宙はもともと、空間と時間をひとまとめにした言葉でした。もう少しさかのぼると、どちらの字も家の屋根を意味していたともいいます。英語の ark も、もとはラテン語の「箱」です。畳の大きさが土地によって違うように、「六畳半」の広さも一つの物差しでは測れません。外へ出ていくことだけが、生きることだと思われがちです。でも、屋根の下で守り抜いた夜も、時間と空間のひと続きです。部屋の中にいる時間を宇宙と呼ぶ見方があってもいいのではないでしょうか。

五

この本の歌を聴く

近日公開予定です。

六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

深夜のコンビニと流星群忘れない読了何も起きなかった今日は、何もなかった日ですか。

「逃げていい」の棚の向かいには、「忘れない」の棚があります。

七

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。