YAMADARIUM

本棚「忘れない」の棚

忘れない

Noon at the Bottom of the Year

Yamadarium

一年でいちばん暗い日にも、正午はあると思いますか。

一

この本について

地下2階の資料室で働く人が、冬至の昼に外へ出る歌です。

昼を知らない部屋で、箱とバインダーとうなる蛍光管にかがみこむ週5日。行きも帰りも暗く、天気は週末に又聞きで知る。冬至の日の12時10分、こっそり階段を上がると、ベンチに淡い陽だまりがある。

腰を下ろすと、陽だまりは板の上をすべっていく。私も少しずつすべって、ついていく。世界の半分は明日へ傾き、北側に住むひとりひとりに、陽がほんの少しずつ増えていく。どこか南では、誰かの夏が短くなりはじめている。同じ太陽の下で。

一年の底の、正午。目を閉じれば、すべてのふちが琥珀色にゆるんでいく。上には正午があると知って、また地下へ戻っていく。いちばん暗い日から這い上がる、その最初の1分の一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

46 行

Two floors down, a filing room that's never felt day,(地下2階 昼を知らない資料室)not once.(一度だってね)Boxes, binders, buzzing tubes, me bent over both,(箱 バインダー うなる蛍管 その上にかがむ私)five days.(週5日)Dark when I descend, and dark again when I'm done,(降りるときも暗く 終わるときも また暗い)both ends.(行きも帰りも)Weeks of weekdays, weather's what the weekend tells me,(平日ばかりの毎週 天気は週末に知る)hearsay.(又聞きで)

, so I sneak up the stairs and step outside,(冬至だから こっそり階段を上がって 外へ)twelve-ten.(12時10分)People pass, a pale patch of sun is on a bench,(人が行き交う ベンチに 淡い陽だまり)I sit.(腰を下ろす)Sun slides along the slats, so I slide over, slow,(陽だまりが 板をすべっていく 私も ゆっくり すべって)follow.(ついていく)From end to end I edge along an empty bench,(いたベンチを 端から端へ じりじりと)it moves.(日が動く)

Half the world is turning, tipping toward tomorrow,(世界の半分が 回りながら 明日へ傾いていく)right now.(いま この瞬間)Every head up here gets a hair more, every one,(北側に住むひとりひとりに ほんの少しずつ)each day,(陽が増えていく)and it's noon, it's noon at the bottom of the year.(そして正午 一年の底の 正午)

Below, the binders wait, the boxes in the black,(下では バインダーが待つ 暗がりに箱)back soon.(すぐ戻ります)Darkest day, and I'm dimmer than I've ever been,(いちばん暗い日 私も一番くすんでいる)down deep.(奥深くまで)Half my hours handed to a hole beneath the street,(時間の半分を 通りの下の穴に 渡してる)half gone.(半分が消えた)

It comes creeping, climbs my coat, my cuffs, my collar,(じわじわ のぼってくる コート 袖口 襟)my face.(顔まで)Eyes closed, everything goes amber at the edges,(目を閉じれば すべての淵が 琥珀色)easy.(緩んでいく)

Somewhere south, somebody's summer's starting to shrink,(どこか南で 誰かの夏が 短くなりはじめる)same sun.(同じ太陽)Both halves of the world at once, at the tilt, the turn,(世界の北と南が いっせいに 傾いて 折り返す)both turn,(どちらも 向きを変える)so it's noon, still noon, at the bottom of the year.(だから正午 まだ正午 一年の底で)

Back I go to binders, boxes, and the buzzing,(戻ろうか バインダーと箱とうなる音へ)but now(でも今は)now I know the noon's up there, nudging, never gone,(今は知ってる 上には正午 そっとつついて 消えはしない)'s mine.(正午は私のもの)

Longer, little longer, light will later,(長く 少し長く 光は遅くまで残る)let's see.(見てみよう)Tomorrow I will take the tiny, gift,(明日は 傾きがくれる 小さな贈り物を受け取る)then more,(その次も もっと)climbing out from noon at the bottom of the year.(一年の底の正午から 這い上がっていく)

One minute more.(あと1分)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

いちばん早い日の入り

日の入りがいちばん早い日は、冬至ではなく、冬至の2週間ほど前にある

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

正午

英語の noon は、もとは「9時間目」、つまり午後3時ごろを指す言葉だった

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

地軸の傾き

北半球が冬の1月、地球は一年でいちばん太陽に近いところを通っている

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

冬至

英語の solstice は、ラテン語で「太陽が立ち止まる」という意味の言葉から生まれた

寄り道する

四

あとがき

一年でいちばん暗い日は、早く過ぎてほしい日に思えます。けれど、日の入りがいちばん早いのは、じつは冬至より2週間ほど前。冬至を待たずに、夕方の光はもう少しずつ延びはじめています。北半球が冬のころ、地球は一年でいちばん太陽に近いところを通り、南のどこかでは、誰かの夏が折り返していきます。暗さの底にいるときも、見えないところで、光は向きを変えている。地下の資料室に戻る前に、ベンチの陽だまりを、端から端へ、あと1分だけ追いかける。そんな小さなことから、明日を受け取ってもいいのではないでしょうか。

五

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

Lit from Down Here分け合う読了欠けて見える月は、本当に欠けていますか。

「忘れない」の棚の向かいには、「分け合う」の棚があります。

六

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。