YAMADARIUM

本棚「逃げていい」の棚

逃げていい

交差点の無重力

秋野唄(AKINO Uta)

誰にも見られていないことは、さびしいことですか。

一

この本について

誰にも見られていないなら、ここは無重力だと、スクランブル交差点の人波に飛び込む歌です。

青信号がせかす人混みを、器用に肩を避けて歩く。ただの背景画のように、いてもいなくても同じみたいだ。期待を背負わされるのには、もううんざりしている。いい子でいるための重たい靴は、脱ぎ捨てました。

教室の息ぐるしさも、職場の冷たい空気も、透明になってしまえば痛くも痒くもない。無視されるのが怖いって? 嘘をついて生きるよりマシだ。震える手を引いて、硬いアスファルトを蹴り上げます。

交差点のど真ん中で、きみとふたり宙に浮こう。この街の重力はもう効かない。繋いだ手のひらの熱だけを確かなものとして、どこまででも浮かんでいこうとする一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

43 行

誰もぼくを見ていないならここはだ息を止めて飛び込もうスクランブルの波の中へ

がせかす人混み器用に肩を避けて歩くぼくはただの背景画いてもいなくても同じみたいだ

期待を背負わされるのはもううんざりなんだよいい子でいるための重たい靴は脱ぎ捨てた

でいいよ評価の鎖を断ち切って交差点のど真ん中できみとふたり 宙ちゅうに浮こう誰の目にも映らないそんなを笑ってやれ

教室の息ぐるしさも職場の冷たい気も透明になってしまえば痛くも痒かゆくもないさ

無視されるのが怖いって?嘘をついて生きるよりマシだきみの震える手を引いて硬いアスファルトを蹴り上げる

透明人間でいいよ見えない枠から飛び出して信号が赤に変わってもぼくらは止まらなくていい誰の目にも映らないそんな自由を笑ってやれ

透明人間でいいよ評価の鎖を断ち切って交差点のど真ん中できみとふたり宙ちゅうに浮こう誰の目にも映らないそんな自由を笑ってやれ

この街の重力なんてぼくらにはもう効かない繋いだ手のひらの熱がたったひとつの確かなもの

さあ、どこまででも浮かんでいこう

目録カード

「空」が出てくる、ほかの本 20 冊

目録カード

「自由」が出てくる、ほかの本 1 冊

言葉の寄り道 ・ 言い回し

青信号

緑に見える信号も、法令の上では「青色の灯火」

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

透明人間

ウェルズの小説『透明人間』の男は、雪が積もると姿が現れてしまう

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

無重力

宇宙ステーションの高さでも、重力は地上の約90%ある

寄り道する

四

あとがき

宇宙ステーションの中で人が浮いているのは、重力が無いからではありません。その高さでも、重力は地上の九割ほど働いています。浮いて見えるのは、乗っている人もステーションも一緒に落ち続けているからです。無重力のように見える場所にも、重さはちゃんとある。ウェルズの小説『透明人間』でも、透明になった男は、雪が積もれば姿が現れ、食べた物が消化されるまで透けて見えるので、思うように食事もできません。透明は、ただ自由なだけではないようです。誰にも見られないことは、いないのと同じだと思われがちです。それでも、人の目から外れて誰かと手をつなぐ時間を、一緒に落ちながら浮かんでいる時間だと考える見方があってもいいのではないでしょうか。

五

この本の歌を聴く

近日公開予定です。

六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

名前のない星たち比べない読了星座に入らない星は、ひとりぼっちですか。

「逃げていい」の棚の向かいには、「比べない」の棚があります。

七

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。