YAMADARIUM

本棚「踏み出す」の棚

踏み出す

はみ出したチョークの軌道

秋野唄(AKINO Uta)

線からはみ出した足あとは、失敗ですか。

一

この本について

白紙の進路希望調査を前に、書ける未来なんてないと吐き出すところから始まる歌です。

いい子ぶって頷くのは、もう吐き気がする。「はみ出すな、真っ直ぐ歩け」という大人の声。息が詰まる教室で、自分を押し殺しかけていた。期待されるのが怖くて、失敗すれば笑われるからと、無難な道を選ぼうとしては足がすくむ。安全地帯に隠れても、心臓は冷たいままです。

こんな息苦しい正解なら、間違っていたい。引かれたばかりのチョークの線をぶっ壊して、綺麗なレールを踏み外す。泥だらけの靴で笑い、評価の枠を飛び越えて、傷を見せつける。

誰かのためじゃない、ぼくらの人生だ。はみ出した軌道を命の証明と呼び、この手で明日をこじ開けようとする一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

40 行

進路の白い紙書けるなんてないいい子ぶって頷うなずくのはもう吐き気がするんだ

「はみ出すな、真っ直ぐ歩け」大人の声が耳障みみざわりだ息が詰まるこのでぼくはぼくを殺しかけてた

ぶっ壊してしまえよ引かれたばかりのの線を怒られるくらいで丁度いい綺麗なレールなんて踏み外せきみの足跡あしあとがになるんだ

期待されるのが怖かった失敗すれば笑われるから無難な道を選ぼうとして足がすくんで動けない

安全地帯に隠れても臓は死んだように冷たいこんな息苦しい正解ならぼくは間違っていたい

塗りつぶしてしまえよ誰かが用意した完璧な図を泥だらけの靴で笑ってやれ評価の枠なんて飛び越えてきみのその傷を見せつけてよ

誰かのためじゃないぼくらの人生だ痛くてもいいから生きてるって叫びたい

はみ出してしまえよ引かれたばかりのチョークの線を土砂降りの雨で洗い流せぼくらはどこへだって行けるはずだその不器用な足で踏み鳴らして

はみ出したがきみだけのの証明だ真っ白な線を蹴り飛ばしてもう迷わないこの手で明日をこじ開けるんだ

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

足跡と地図

伊能忠敬は55歳で測量を始め、全国を歩いた距離は約4万キロといわれる

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

軌道

惑星の軌道は円ではなく、引き伸ばされた楕円

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

スクールと「暇」

学校の school の語源は、ギリシャ語で「暇」を意味する scholē

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 語源・本来の意味

チョークと白亜紀

恐竜の時代の「白亜紀」の「白亜」は、チョークのこと

寄り道する

四

あとがき

惑星の軌道は、長いあいだ完全な円だと考えられていました。ケプラーが火星の記録と向き合って見つけたのは、円ではなく、引き伸ばされた楕円でした。正しい形だと信じられていたものより、はみ出した形のほうが本当だったのです。五十五歳で江戸を出発した伊能忠敬の歩いた跡は、のちに日本の地図になりました。学校の school も、語源をたどれば「暇」にゆきつきます。まっすぐ歩けと言われる教室も、もとは、ゆっくり考えるための場所だったのかもしれません。線の外に出ることは、間違いだと思われがちです。線の外に残った足あとを、間違いとは別の名前で呼ぶ見方があってもいいのではないでしょうか。

五

この本の歌を聴く

近日公開予定です。

六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

自転遅れの朝比べない読了置いていかれた場所からは、何が見えますか。

「踏み出す」の棚の向かいには、「比べない」の棚があります。

七

次の一冊を探す

この本を閉じたら、また本棚へ。