YAMADARIUM

本棚「踏み出す」の棚

踏み出す

The Wind Has Somewhere to Be

Yamadarium

胸の重さは、ずっとそこに居座りますか。

一

この本について

閉めていた窓を、今度は開けたままにしておく。それだけの歌です。

カーテンが、誰かが入ってくるように持ち上がる。風鈴は自分の拍子で鳴り、風は潮のにおいと、誰かの干したてのシーツのにおいを連れてくる。前は、呼ぶ声がするたびに窓を閉めていた。じっとしていれば、崩れずにいられると思っていたから。

風は、誰かの洗濯物のシャツを引っぱり、パン屋の戸口から焼きたての匂いを連れ出し、知らない人の額を冷ましてから、ここへ来た。ノックもしないし、待ちもしない。留まらずに、もう次の場所へ向かっている。

胸にのしかかっていたものも、同じように動いていくのかもしれない。最後に風は、こちらへひとつ問いを置いていきます。窓を少し開けて読みたい一冊です。

二

見方を裏返す

表は、よくある見方。裏には、この詞の見方が書いてあります。

歌詞の中の、その一節へ

三

本文

読み進めるほど、言葉に灯りがともっていきます。心に残った行は、押すと栞をはさめます。金色の言葉は、ほかの本につながっています。

41 行

Oh, the wind has somewhere to be,(ああ 風には行くあてがある)it's only passing through, passing through me(通り過ぎてくだけ 私の中を通り過ぎて)

The curtain lifts like someone's coming in,(誰かが入ってくるように カーテンが揺れる)the wind chime counts a rhythm all its own,(風鈴は 自分の拍子で鳴っている)it and somebody's clean linen,(潮のにおいと 誰かの干したてのシーツ)a long way from wherever it was blown(吹きはじめた場所から ずいぶん遠く)

I used to latch the window when it called,(前は 呼ぶ声がするたび 窓を閉めてた)I thought that holding still would keep me sane,(じっとしていれば 崩れずにいられると思っていたから)this time I leave it open, that is all,(今度は開けておくだけ ただそれだけ)and listen to it down the lane(小道を抜けていく 風の口笛を聴く)

Oh, the wind has somewhere to be,(ああ 風には行くあてがある)it won't stay, no, it won't stay,(留まらない ううん 留まらない)it came the long way ,(長い道のりで 海を越えてきて)and it's already on its way,(もう 次の場所へ)and what's been sitting on your chest(胸にのしかかっていたものも)is moving too, is moving too(動いていくんだ 動いていくんだ)

It's tugged a shirt on someone's washing line,(誰かの洗濯物のシャツを引っぱり)it's carried bread smell out a baker's door,(パン屋の戸口から 焼きたての匂いを連れ出し)it cooled a stranger's forehead, now it's mine,(知らない人の額を冷まして 今は私の額)and it's still got room for more!(それでもまだ 運び足りないよ!)

So every gust that rattles at my glass(だから ガラスを揺らす風のひとつひとつに)is carrying a little bit of them,(あの人たちが 少しずつ乗っている)and everything I'm carrying will pass,(私が抱えているものも いつか過ぎる)the way a gust goes soft around the bend(角を曲がって 風がやわらぐみたいに)

Oh, the wind has somewhere to be,(ああ 風には行くあてがある)it doesn't knock, it doesn't wait,(ノックもしない 待ちもしない)it lifts a little off of me(私の重さを 少しさらって)and doesn't stop to hesitate,(迷うそぶりも見せない)the curtain settles, the chime goes still,(カーテンがおさまり 風鈴が黙る)and so, for once, do I(そして めずらしく 私も)

Oh, the wind has somewhere to be,(ああ 風には行くあてがある)and so do you, and so do you,(あなたにもある あなたにもある)it came the long way over the sea(長い旅をして 海を越えてきた)to show you how to pass on through,(通り抜けかたを 教えるために)whatever held you down for years(何年もあなたを押さえつけてたものも)is lifting too, is lifting too(ふわりと浮いてく 浮いてく)

Oh, the wind has somewhere to be,(ああ 風には行くあてがある)it's at the door, it's down the hall,(もう戸口に 廊下の向こうに)I'm opening the window wide,(窓をいっぱいに開け放つ)I'm ready for it all(もう 何だって来ればいい)

So where are you headed now?(それで あなたはこれからどこへ向かうのかな?)

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

海を越えて

サハラ砂漠の砂ぼこりは、風に乗って大西洋を越え、アマゾンの森まで届いている

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

風の口笛

電線が風で鳴る音の高さは、風の速さと線の太さで決まることが、1878年に確かめられた

寄り道する

言葉の寄り道 ・ 歌詞の解剖

潮のにおい

海辺の「潮のにおい」のもとのひとつは、海の微生物がつくる硫黄のガス

寄り道する

四

あとがき

落ち込んだときは、じっとして、嵐が過ぎるのを待つ。それも大切なやり方です。でも、閉めきった部屋では、重さもまた、どこへも行けずに留まってしまうことがあります。サハラ砂漠の砂ぼこりは、毎年、風に乗って大西洋を越え、アマゾンの森に降りそそいでいると、人工衛星の観測から見積もられています。遠くから来た風は、何かを運び、何かを置いて、また次へ向かう。抱えているものを、無理に手放さなくてもいい。窓を開けておくだけで、少しずつ運ばれていくものもあるのではないでしょうか。行き先は、まだ決めなくてかまいません。風のほうが、先に知っていることもあります。

五

この本の歌を聴く

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六

向かいの棚から、一冊

この本とは、少し違う見方の本です。

One Root Under the Hill信じ直す読了震えているのは、あなただけですか。

「踏み出す」の棚の向かいには、「信じ直す」の棚があります。

七

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